昨日3月24日に内紛騒動にゆれるクックパッドの株主総会がありましたが、この2日前には創業者で43.5%の株式を保有する佐野陽光氏は取締役会で執行役から解任されるという異例の事態がおこっていました。
この騒動である人物を思い出します。
スティーブ・ジョブズです。
スティーブ・ジョブズと佐野陽光氏
1977年にAppleⅡを大ヒットさせたスティーブ・ジョブズは1983年にペプシコーラ社長だったジョン・スカリーを口説き落としてAppleに招き入れ、スカリーはCEOに就任します。その後、1984年にMacintoshを発売したスティーブ・ジョブズは需要予測を大きく外すなど会社に損害を与える等、いくつかの失態が重なり実質追放されてしまう。
その同年の1985年には所有していたアップル株を全て売却してNeXTやピクサー・アニメーション・スタジオ等の設立などを経てアップルに復帰します。その後の活躍はご存知のとおりです。
IT業界の歴史に刻まれるこの出来事。当時のスティーブ・ジョブズは株式の過半数を保有していませんでした。
今回のクックパッドのケースでいうと佐野陽光氏は43.5%を保有する圧倒的な筆頭株主。議決権の行使でいうと実質過半数を超えています。
これだけの株式を保有する佐野氏だったからこそ、スティーブ・ジョブズのような追放劇とはならなかったのでしょう。
あと10%少なかったら状況は全然違っていたかもしれません。
株主総会で明かされなかった新経営体制
その後、当日の20時にIRで開示されましたが、佐野氏の思惑が旧経営陣に知らされていなかったのは株主総会のやり取りでもわかります。3つ目の質問に対する旧経営陣の答弁を振り返ってみましょう。
Q3 一連の騒動で株価が下がっている。お客様商売のクックパッドで、喧嘩をして企業価値を傷つけるような取締役はその資格はないと思っている。一連の経緯をみて、佐野さんは取締役としてふさわしいと思っているのか。懲罰を考えているのか
— すずき
A3(西村) ふさわしくない行動だったと思っている。理由は2点、株主総会後の新体制を明らかにしていないこと、新体制で日本に帰国して代表取締役として陣頭に立つかどうか分からないこと。日本に帰ってこない場合にはさまざまな課税や訴訟のリスクがある
— すずき
A3(西村) クックパッドの人たちを束ねていく人望を見せてほしいけど、まだ見せてもらっていない。私たちとしては執行役解任が懲罰だと考えている
— すずき
A3(岩倉) 2月11日には現在の取締役体制には賛成、そうではないものは反対した。佐野さんについては棄権した。すばらしいビジョン持っているし。ただ、一連の行動について、米国では信認義務違反になるのではないか
— すずき
A3(熊坂) クックパッドを良くしていこうという佐野の熱意は理解している。組織がこれだけ大きくなったときに、多角化か集中かということで、株主提案という形で行動を起こしたのは暴挙だと思うが、僕は一方では理解する
— すずき
A3(熊坂) アキタさんと話し合って合意できたので良かったと思う。解任動議には賛成したが、それは僕の彼に対するペナルティ。彼の本質をわかってほしい
— すずき
A3(新宅) 株主提案については当然不適切に思い、取締役会でもそう発言した。佐野さんはこれだけの事業の根幹を作った大株主なので、彼を会社の外に置くのは成長途上の会社にとっては難しいのではないか
— すずき
A3(山田) 監査という観点からすると、法律などに関しては問題ないと考えている。ただ、妥当性という観点からすると、株主提案という行為は荒っぽいと感じている。たぐいまれなビジョンを持った人なので、佐野さんが会社を離れるのは時期尚早なので、支えてほしいと考えている
— すずき
A3(アキタ) 株主提案は株主としては適切だが、取締役としては不適切。取締役としては創業者であるし、海外展開などに必要な人材。ペナルティとしては、執行役解任を出されたのでそれがペナルティになっている
— すずき
旧経営陣の間のすれ違いが垣間見えます。
株主総会の後にIR。マッキンゼー出身の岩田氏が代表に
ポイントは2点。
「2日前に解任された佐野氏の執行役復帰」と「穐田誉輝氏の代表執行役退任&岩田林平氏の代表執行役就任」です。
株主総会の後に行われた新体制での取締役会での決定事項だから株主総会では当然話せる内容ではない。ただもちろん佐野氏の中では前から決めていたでしょう。
でも岩田氏の代表執行役就任は意外でした。
市場では穐田氏か佐野氏のどちらが代表につくのかが注目されていたからです。
ちなみに岩田氏はマッキンゼー出身。
ミクシィの笠原会長の元でモンストを生み出し、会社を成長フェーズにのせた朝倉氏もマッキンゼー出身でした。もう退任されてますけどね(意味深)。